共同親権の導入を柱とした民法などの改正案の審議が進んでいる(写真:beauty_box/イメージマート)共同親権の導入を柱とした民法などの改正案の審議が進んでいる(写真:beauty_box/イメージマート)

「共同親権」の導入を柱とした民法などの改正案を巡り、与野党は見直し規定などを盛り込んだ修正案を提出した。衆議院法務委員会で賛成多数で可決された後、4月19日からは参議院で審議が始まっている。

 離婚後に父母の双方が子どもの親権を持ち、大事な決定事項を一緒に決めていくことを認める「共同親権制度」には、専門家から数多くの反対の声が出ている。共同親権はどのような問題をはらんでいるのか。離婚問題を数多く扱ってきた名古屋南部法律事務所の岡村晴美弁護士に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──共同親権の導入が始まると、何が変わる可能性があるのでしょうか?

岡村晴美氏(以下、岡村):これまでよりも決めることが増えるので、元夫婦間の紛争がより長期化する可能性があります。

 単独親権が適用されたケースが後に共同親権に変更となったり、逆に共同親権が適用されたケースが結局うまくいかず、特定の事項に関しては裁判所で決めたり、単独親権に切り替えたりする場合が出てくると思われます。

 法的な手続きが離婚で終わらなくなるので、様々な意味で、問題が長期化することが予想されます。

「ややこしい人のためにややこしい制度を作っている」

 今までは「親権者を決める」と言っても、法律に関する現場としては「同居親を決める」という感覚でした。離婚すると別居になりますが、「どちらの親と一緒に子どもが住むか」ということです。共同親権が導入されると、それを決めたうえで「別居親の親権をどうするか」という論点が増えるのです。

 また、共同親権にした場合「監護者を定める」ケースも出てきます。「監護者」とは「子どもに関する意思決定者」。「教育については監護者を母と定める」「医療に関しては監護者を父と定める」など、役割ごとに監護者を分けることもできるようになります。

「多様な婚姻関係」と呼ばれたりもしますが、私から見ると、これは制度の複雑化に他なりません。はたして裁判所がこれだけ複雑な形を、きめ細やかに決定していけるのか、疑問です。

 もちろん、合意のうえでいろんな役割を父と母で分けるのは良いことですが、それは共同親権を導入しなくとも、そうしている元夫婦はたくさんいます。わざわざ制度化して、裁判所が命じる必要があるのかというと疑問がありますね。

 そして、共同親権は上手くいかなかった時のために、様々な面で後から変更しやすい制度になっています。

 ただ、共同親権が導入されていない現状では、親権の変更は稀です。よほどひどい虐待があるか、子どもの拒否感が強いなどのケースでしか親権は変わりません。共同親権の導入は、わざわざややこしい人たちのために、ややこしい制度を作っているように、私には見えます。

──現状では、親権を持っている人が、子どものことに関して決定権を持っているものなのでしょうか。それとも、親権に関係なく、元夫婦同士で話し合って大事なことを決めているものなのですか?